【ご挨拶】

会長 加茂 政志

私がカンボジアで事業を展開し始めた1997年、空港からのプノンペン市内への移動の車中、信号のない凸凹道路で激しく揺られたことを昨日のことのように憶えています。一方、宿泊先のインターコンチネンタルホテルの廊下は、ピカピカの大理石が敷き詰められ、天井のシャンデリアには明かりが灯され、別世界のように感じられました。そんなプノンペン市、カンボジア王国も、今ではフン・セン首相の強力な リーダーシップのもと国民が一丸となり、信号システムを備えた近代的な交通網を初めとする各種インフラをも確立させ、活気溢れる都市、王国を支えるに至りました。

当時、日本と現地採用のカンボジア人からなる国際色豊かなスタッフと仕事をしておりましたが、そんな彼らの目にも日夜発展しつつあるプノンペン市街は頼もしくさえ映りました。ところが、郊外へ足を延ばし田舎の貧しさを目の当たりにしては心が非常に痛み、この国に貢献するには、事業を行うよりもまず奉仕活動が必要である、とひらめきました。 それからというもの、気がつけば、カンボジア駐日大使とともに掘った井戸は50本余りにのぼり、近年、職業訓練学校建設に着工するに至りました。

カンボジアの目指す将来が農業国か工業国かの選択は、カンボジアの若い指導者に委ねることとし、私はこの国の特徴である豊富な水と豊かな土壌を生むトンレサップ湖を利用した近代農業を導入することに尽力することこそが、同国の発展に寄与することではないかと考えておりました。そのような折、フン・セン首相の目指す2015年までに米の輸出量を100万トンにするという壮大なプロジェクト構想を聞き、自分の道が間違っていなかったことを確信した次第です。

機会のあるごとに、カンボジアの窮状と同時に、農業立国として発展の可能性を日本の政治家の方々や各大手企業の方々に訴え続けてまいりましたが、そんな私の活動に共感をいただき、同国の発展に一役買いたいと、日本のある大手企業に精米事業へご参加いただくこととなりました。

このことは、私にとって同国の近代農業への歩みに、微力ながらも寄与することができたと、無常の喜びを感じている次第でございます。今後も、こうした活動により一層力を注ぎたいと思っております。

また、カンボジア進出を計る日本の企業や、世界遺産であるアンコールワットを目指す観光客の方々にも気軽に足を運んでいただけるよう、日本の大手航空会社とカンボジアの航空当局に、日本・カンボジア両政府に依る航空協定の締結を働きかけております。締結された暁には、両国の距離を縮める直行便も生まれることになるでしょう。皆様のご理解とご支援のおかげで、現在準備中の農地開墾も大きく拡がる勢いです。今後も皆様のご期待に応えられるようなNGOを目指して日夜取り組んでいきたいと思っています。